2013年8月23日金曜日

『ドイツのシミュレーションでは福島の汚染水で太平洋は終り』という記事について


『ドイツのシミュレーションでは福島の汚染水で太平洋は終り』 (http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-2309.html)という記事があります。この記事で引用している「ドイツのシミュレーション」が、実際には何を示しているかを知るために、研究所の公式サイトからのリンクにある英語の解説記事を翻訳しました。


----- 解説記事の翻訳 -----

2012年7月9日

福島の放射性物質が5年以内にアメリカ合衆国の海岸に到達する可能性

ドイツの海洋学者のシミュレーションによると、福島原子力発電所から流出した放射性物質を含む水が、今後5年以内にアメリカ西海岸に到達し、その海水の放射性物質の量は二倍になる。


ドイツ・ヘルムホルツ協会傘下のキール海洋学研究所のクラウス・ボーニング、エリク・ベーレンスらは、放射性物質が数週間にわたって日本の海岸から流出したと仮定して、地球海洋循環モデルを用い、その放射性物質の動向を予測した。さらに10年間にわたる拡散・希釈の様子をモデル化した。

クラウス・ボーニング氏は「当然、混ざっていく効果があるのは分かっていましたが、その拡散の早さに驚きました。」と Environmental Research Web に語った。「1年で北太平洋の西半分に広がり、5年以内にアメリカの西海岸に達すると予想しています。」

しかしボーニング氏は、かなりの拡散・希釈の結果、アメリカの西海岸に達する頃には、放射性物質濃度のレベルは福島から流出したものに比べて、かなり低くなると指摘している。「アメリカの海岸に達する頃には福島からの流出のときと比べて放射線のレベルは小さくなっています。」と語る。「しかし我々は、福島から何がどのくらい放出されたのか分からないので、これらのレベルを正確に予測することはできません。」

シミュレーションでは、10 PBq(10000兆ベクレル)のセシウム137が、福島原子力発電所の事故から数週間の間に流出したと仮定し、最初の2年の間に、最大値で1立方メートルあたり10ベクレルまで希釈され、その後4年から7年の間に1立方メートルあたり1〜2ベクレルまで下がると予測された。事故前と比べて、最大で放射線物質のレベルは2倍ほどになる。ボーニング氏は「驚かせてしまうかもしれませんが、これは飲料水の放射線量制限値よりも低いレベルです。」と言う。

研究チームは、海流の渦のシミュレーションにあたって、分解度を変えると結果が変わってくるのを確認した。「これは、細かい分解度を用いたシミュレーションが必要であることを示しています。」とボーニング氏は説明する。さらに「生物が多い場所での生物濃縮が起こるかもしれないといった生物学的プロセスや、沈殿していく粒子に吸着した放射性物質の縦方向への拡散というあり得る現象はモデル化していません。」としている。

研究チームはこの結果をEnvironmental Research Letters (ERL)で発表した。

著者 Nadya Anscombe フリーランス ジャーナリスト(ブリストル・英国)

----- 翻訳ここまで -----

翻訳は @SugitaKei

----- 修正履歴 -----
2013
24 Aug
”10 PBq (1000兆ベクレル)” を ”10 PBq (10000兆ベクレル)” に訂正。
”福島原子力発電所の事故から一週間の間に流出” を ”福島原子力発電所の事故から数週間の間に流出” に訂正。